DarkFairyDance -Attachment-

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toonmarx


Illustrator:maruido


私は真っ黒だ。

真っ黒になってしまった。光も通さないような黒。黒に更に黒を塗ったような黒。


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私達は精霊だ。

この世界の精霊はファンタジーに出てくるような精霊とは違う。人間が私達を見て精霊と言ったから精霊なのだ。

精霊がいる世界は精霊界。

精霊は大人。

子供は妖精。

そのように呼ばれている。

私達は私達を種族名で呼ぶことがなかったため、精霊、妖精という種族名を受け入れた。

精霊は波長の合う人間と結ばれる。

波長が完全に合っている精霊と人間は、身体を一つにすることができる。人間の中に精霊が入るのだ。

身体能力が向上し、精霊との意志疎通が瞬時に行える。さらに、精霊が覚えている魔法も使うことができ、精霊固有の能力まで使える。

ただし、人間側には獣の耳や尻尾が生える。

獣の格好が嫌な場合は合体を解除すればいい。そうすればただの人間とただの精霊だ。

精霊についての説明はこのくらいにして、閑話休題。

さて、妖精が精霊になる。では精霊は何になるか。消えていなくなるか、もしくは……


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私、精霊のネメシスは彼女の居場所がわかり次第、家を飛び出るつもりだ。

主人、人間の高倉禰子は既に家にいない。彼女の彼女、桜佳織が拐われたからである。彼女の彼女とややこしいが、同性愛者だ。

桜佳織はパートナーである精霊、メランコリアに拐われた。拐われた理由はなんとなくわかる。

佳織はメランコリア、メリアをいつものように弄んで楽しんでいたのだろう。

佳織にとっては嫌がらせ。

メリアにとってはご褒美。

少し嫌な関係だ。

最後に見たメランコリアは精霊とは違う、黒い存在だった。


私達が居合わせた時には、佳織の家の和室の一つから何かが強く床や壁にぶつかるような音が聞こえた。

部屋の扉を開けた禰子と私は、意識を失って壁にもたれ掛かっている佳織と、その前に立っているメリアを見た。メリアの表情は見えなかった。

頭の上に黒い天使の輪のようなものがあり、そこから黒く薄い霧のようなものが漏れている。全身を覆うように漏れた霧は、少し乱れた服や手にぶつかり消えていく。

「佳織!」

禰子が走り出そうと、メリアに詰め寄ろうとする。

「来ないでっ!!」

メリアがこちらを見ずに叫び、佳織の腕をつかみ、瞬間、その場から音もなく消えた。

黒い霧は全て床に当たり、消えていく。


部屋の中で立ち尽くしている禰子に私はゆっくり、慎重に話しかける。

「禰子、メリアのいる場所の手がかりを見つけよう」

少しふらつく彼女はこちらを向く。私は部屋の入り口に立ち、彼女が闇雲に捜索し始めないように塞いでいる。

「どいて」

「嫌だ」

「どいて」

「絶対にどかない」

歩いてくる。目の前にくる。彼女の顔が目前にまでくる。

「どいてって、」

彼女はゆっくりと口にして、

「言ってるじゃない!」

全体重を乗せて、私にぶつかってきた。

「っ!?」

ドンッ!

床に叩きつけられる。その横を転びそうになりながら走っていく禰子がいた。


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禰子はどこに行ったかわからないので、仕方なく家に帰ってきて、今に至る。

目の前のおっさん、この家の家主、桜勇蔵は私に向かって、

「おう、どうした?禰子は一緒じゃねぇのか?」

と訊いてくる。

この狭い家の台所であまり美味しくない料理を作る勇蔵を無視して、私は6畳程の部屋の真ん中、ちゃぶ台の前に座る。

「無視か?おっちゃん傷つくぞ?」

「ええ、勝手に傷ついててください」

「おいおい、どうしたどうした、いつものようにずっと無視しないとは、ただ事じゃないな?」

後ろから驚く30代後半の声が聞こえる。

「それともなんだ?あれか!欲求不満なのか?誘ってるのか?たまには」

「やりません。そもそもおっさんの相手とかあまり楽しくないので。というか、そういうことは月一にしてくださいっていつも言ってますよね」

はいはい、と飽きた感じの声が聞こえる。

私は、あまり話す気がなかったことを、彼に伝える。

「禰子は、拐われた佳織を探しに行きました」

ガタンッ!

物音がして、後ろから突然肩を捕まれた。

「きゃあ!」

私はびっくりして叫び、手で胸を抑える。襲われるんじゃないかと身構えた。実際、何回か襲われてるので、怖くて泣きそうになる。

しかし、

「佳織が拐われたってどういう事だ!?」

後ろを向くと、慌てた表情の勇蔵がいた。


「それは暗黒精霊、怨霊精霊などと呼ばれるものだな」

「暗黒…精霊…」

適当に作られたラーメンを食べながら、勇蔵と話す。こんな時に食べるのもあってか、元々上手くない料理が更に不味く感じる。

「といっても、言動は子供っぽいのが多いから、」

彼は会話中でも関係なく麺を啜る。

「暗黒妖精、ダークフェアリーと呼ばれてるな」

「ダークフェアリー、たしかに黒かったし、その呼び方はしっくり来ます」

「だろ?」

またしばらく麺を啜る。

「ダークフェアリーになる原因は、精霊が一定以上のストレスを抱えることだ」

「ストレスですか?」

彼はコップに入っている水を少し飲む。

「嫌がらせを長年受けたり、身体に多きな負担を掛け続けたりするとダークフェアリーになる可能性がある」

「……なるほど」

「ん?ネメシス、お前何か知ってるんだな?」

「ええ、知っていますが、教えたくはありません」

「そうか」

彼は深く訊かない。

「で、一番重要なんだが、ダークフェアリーは精霊の怨霊としての姿、つまりメランコリアは既に死んでいるわけだ」

水を飲んでいた私は、それを聞いた瞬間、吹いた。

「おわ!汚ねぇぞ!」

「おっさんの吐き出す水よりは綺麗だと思うのですけど」

「あー、はいはい」

「で、メリアは死んでしまったのですか?」

彼は机を拭きながら、

「まあ、死んでいるようなもんだ。元の精霊に戻す方法があるのかもしれねえが、俺は知らねぇ」

「わかりました」

私は立ち上がる。

「行くのか?」

敵が死んでいる身なら、助ける意味はない。 助けるべき人物は一人だけだ。

「あなたの弟さんの娘、佳織を助けに行きます」

強引に、無理矢理にでも助ける。


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ダークフェアリーは目標を達成するまで永遠に消えない存在。

ダークフェアリーは精霊界の暗い場所にいる。山の洞窟や薄暗い森などだ。

家を出る寸前、靴を履く私に勇蔵はこれらの事を教えてくれた。

私からはメリアがダークフェアリーになった理由を話そうと思ったが、やめた。なぜなら、佳織が原因だからである。

佳織はメリアの事が嫌いだ。でも、メリアは佳織の事が好きだ。

佳織はメリアの事をいじめていた。攻撃的なことではなく性的なことでいじめていた。

そんな状況でもメリアは逃げなかった。

佳織のことを好きになったのが何故なのかは知らない。単純すぎたのか、そういう性癖なのか。

佳織はメリアのその気持ちに気づいていて、それでも受け入れずにいじめ続けて、ストレスとしてメリアの身体に負担を掛けていたのだろう。

勇蔵にこのことを話せないのは、佳織はそんなことをしていないと彼が思っているからだ。佳織のことを彼が娘のように見ているからだ。

佳織がそんなことをしていると知れば、たぶん勇蔵は落ち込むだろう。そういう人だ。


そんな勇蔵にお礼だけ言って家を出る。

私がダークフェアリーを知らないのは、生まれたばかりの頃からこちらの世界にいるからで、一度も精霊界に戻ってないからだ。

知っていれば禰子と一緒に精霊界へ向かえたのかもしれない。

家から出た私はアパートの目の前の地面に精霊界行きの魔法陣を描いた。

転移の魔法陣は行先を指定することができる。大雑把な指定方法から詳細な指定方法まで、行先をあらゆる方法で指定できる。

私は精霊界に詳しくないので、適当に『森、暗い』と行先を大雑把に書き足した。

数十秒で完成した魔法陣に乗る。すると、魔方陣が青白く光り、場所が住宅街から森へと変化する。

「随分と変なところに出てしまった……」

魔方陣から出て目の前を見る。

木が多く薄暗く、日の光が遠くに見える。たしかに適当に設定した行先通りだ。

なんだか落ち着くような、人間界にいるときと感覚が違う。

「ここが精霊界……」

後ろを見ると魔方陣がまだ僅かに明るく、青白く光っている。この光が消えるまでの約十秒はアパート前から今私のいるこの場所への転移が可能だ。

可能なのだから、

「なっ!?」

見知った人影が目の前に現れた。

この場所は落ち着くが、それよりもっと落ち着く相手だ。

「やっぱりネメシスじゃない」

禰子だった。


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暗い森。

まるで私の心のよう。

光が見える。日の光は今の私には邪魔だ。当たっているだけで消えそうになる。

光が見える。青白く。どこか懐かしい光。

青白い光に向かって足を進めた。


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「禰子!なんであなたまで!」

目の前に現れた禰子に対して私は言う。

「ちょうど家に戻ってきたらあなたがこの魔法陣でどこかに行くのが見えたから、佳織のいる場所が分かったのかと思って魔法陣に飛び込んでみたのよ」

青白い光は少しずつ消えていく。もう転移は使えないはずだ。

「ところでここはどこ?なんか少しふわふわするんだけど」

禰子は人間なので、私達、精霊の力を借りないとこちら側には来ることができない。たぶんまだ精霊界という認識は無いのだろう。

「精霊界。私の生まれた世界」

薄暗くなり彼女の表情が見えなくなってきた。

「え、精霊界ってこんなに暗い場所だったの?もっとファンタジー的なところだと思ってたのに……」

ほとんど表情は見えていないがたぶんがっかりしているのだろう。

「いや、ここは森だから。それよりも明かりを点けないと」

私は明かりになりそうな魔法を考える。

炎系の魔法は森なので危ない。となると光系の魔法になる。私はそこまで魔法に長けているわけではないので、明かりにしかならなそうな魔法を使うことにした。

「えっと……、あった」

タブレット端末を取り出し、ペイントソフトを立ち上げ、魔法陣を描く。

「毎回思うけど、魔法陣ってそんなにデジタルな感じでもいいのね」

「描ければいいから」

豆電球のような光がタブレット端末の上に浮き、オレンジ色に輝き、辺りがほんの少し明るくなる。魔法陣の明かりとほとんど同じくらいなので問題は無い。

「ありがと。ところで佳織の居場所はわかったの?」

あくまで佳織の居場所であって、彼女はメリアの居場所とは言わない。

「だいたい。薄暗い森とか暗い洞窟にいるって勇蔵さんが」

「へー、おっちゃん意外と詳しいんだ。じゃあ、ここからは地道に探すしかないってわけね」

「ええ」

私が頷くと同時に草木を踏む物音がした。

「なっ!?」

物音がした方を振り向く。その前に、

「見ないでっ!」

メリアだ。声でわかる。

「お前もこっちを見るな!」

場所的に禰子からはメリアが見えている。

「わかったわよ」

禰子は仕方なく、メリアを見ないように背を向ける。

ダークフェアリーとしての自分をあまり見られたくないからなのか、逃げるからなのか。

「わかったけど、逃げるわけじゃないよね?」

禰子は焦りを抑えて冷静に話しかける。

「私から佳織を奪いに来たの?」

たぶんこの発言に対して禰子は冷静になれない。と思ったので、私は少し彼女に近寄る。

「あなたのじゃないし、私の――」

言う前に禰子の手を掴む。

「私のっ、私のだからっ!!」

メリアが叫ぶと同時、私は禰子の中に入り込み、あまりやってはいけないが彼女の身体を無理矢理動くように意識そのものを動かす。

禰子の身体が無理矢理動かされ、転ぶように横に数歩ずれる。先程までいた地面が抉れた。

「うわっ、色々と無茶苦茶だな!」

私に向かって言っているのか、メリアに向かって言っているのか、禰子は喚いている。

たしかに、一瞬でも身体の主導権を握られたら普通は焦る。

「佳織は渡さないから!」

「はぁ、まるで駄々をこねる子供じゃん。私のだから、力ずくで返してもらう」

どっちも子供っぽいことを言っているような気もする。が、確かにダークフェアリーは言動が子供っぽい。

「この姿、あんまり好きじゃないけど、行くよネメシス」

「はい」


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禰子は名前の通り猫だ。猫の耳と尻尾が彼女に生える。

彼女はあんまり、というかかなりその姿を嫌っている。名前のせいだと前に言っていた。


薄暗い森の中で、わずかな明かりの中で、私と禰子はメリアの方を振り向き、

「雷撃!」

攻撃に使えそうな魔法を使う。

「いやぁっ!」

メリアの黒い霧は盾にもなるようで、雷撃は霧に当たり、弾けた。

「やっぱり雷系はルミネスの方が使えるし仕方ないか」

私は軽く呟く。

振り向いたことでわかったことは、メリアが左手で佳織の腕を掴んで引きずっていること、佳織の意識が無いこと、距離は十歩程ということ。

「じゃあ、氷で!」

禰子は勢いよく駆け出し、メリアまで近づく。この姿なら人間の時より速い。

走り出すと同時に私は魔法陣を描き、禰子に送る。精神内なのでどこに描くとかそういうのは無いが、わかりやすくタブレットに描いて伝える。

二歩目で手に氷の刀を作り出し、五歩目で突きの構えをとり、

「こっちに、」

七歩目で攻撃、

「来るな!」

できなかった。

何かが折れる音が聞こえ、反射的に止まる。

「来るなら、もう一度、刺してやる!」

氷の刀は横から何かがぶつかったのか、折れていた。

身の危険を感じ、少し、三歩ほど後退する。メリアとの距離は六歩程度。

「たぶんあの霧は攻撃にも防御にも使うことができる」

「そうみたい」

「もっと速く、私が動けばいいんだよね?」

「わからないけど、それしかないかもしれない」

脳内会議。口には出さずに作戦を決める。

もう一回、氷の刀を握り、先程より速く、走る。

「何度も来ないで!」

相手との距離が三歩程になったとき、先程と同じ攻撃が来る。黒い霧が槍のように尖り、走る禰子を真っ正面から貫こうとする。

それを禰子は、わかっていたかのように右に避ける。腕を槍が少しだけ掠る。そんなことには構わず、メリアの左手に刀を振るう。

「いやぁあ!」

斬るわけではない。氷の冷たさで攻撃をする。

「ネメシス!?なんで峰打ちになってるの!?」

「そ、それは……」

迷ったからだ。何か救う方法があるかもしれないから傷つけない方がいいのではないか、と。

「いやっ!離して!痛い!」

凍傷するメリアの左腕を見る。痛々しいが、たぶん今の禰子はそんなことは考えず、刀をそのまま押し付け、横に押し倒すようにする。

「きゃあぁぁ!」

左手が佳織の腕を離す。メリアは逃げるように倒れる。までに、お札が数枚飛んできた。

「っ!?」

避けきれない。

腕を前に出すように、禰子を動かしてもいいが、それよりも、

「固有能力の方!」

右腕と腹部、左足にお札が触れ、張り付く。

刀を力いっぱい振ったことで態勢を崩した禰子は、バランスを崩して尻もちをつくように倒れる。と同時に私の身体にまで電撃が走った。

「――っ!?」

声が出ないほど痺れる。ほんの一秒で電撃は止んだが、倒れた身体を動かすことはできない。内側にいる私も何もできない。

「はぁはぁ、い、痛いじゃない……!」

腕を怪我したメリアが立ち上がるのが見える。

「もう諦めてよ!」

「っ、ま、だ!」

私の固有能力、『復讐』は動けないと使えない。動ければ、どんな攻撃だろうと直前に受けた攻撃の威力以上の攻撃を相手にぶつけることができる。完全にカウンター技なので、賭けだ。

「佳織は、渡さ、ない……!」

禰子は無理矢理立ち上がろうとする。しかし、黒い霧が手足にまとわりつき、拘束する。

目の前まで黒い槍を持つメリアが歩いてくる。

「これで、終わり」

先程までと違って冷静な、いつものメリアのような声。

右手だけで槍を持ち、禰子に突き立てようとする。

このままだと、また禰子が、悪魔によって暴走してしまう。

メリアは右手に力を入れ、槍を振り上げ、

「ぃっ!」

私なのか、禰子なのか、叫びが出そうになった瞬間、

「何してくれてんだ!」

メリアが横に吹っ飛んだ。


「か、佳織!」

「ちょっ!?禰子!?今見ないで!」

着物姿の佳織は引き摺られていたせいか服が乱れている。

「で、何よこれ、どういう状況?」

「それは後!」

佳織の後ろから黒い霧が大量に押し寄せる。倒れたままのメリアがこちらに攻撃を仕掛けようとしている。

「霧から離れて!」

私が禰子の身体を動かし、急いで立ち上がり、目の前の佳織を抱きしめ、霧の無い後ろに跳ぶ。

黒い霧は全体的に棘のように尖り、私達を突き刺そうとしていたようだ。

「逃がさない!」

着地すると同時、目の前に瞬間的にメリアが現れ、お札を数枚放ってくる。

私の伝えた魔法陣を禰子は咄嗟に投げる。光の粉の塊が飛んでいき、メリアの目の前で広がり、魔法陣の形になる。

お札と魔法陣がぶつかり、燃える。

「古流のお札ね」

「私がよく使っている物じゃない。いつも十枚持ってるわ」

佳織は後ろに下がり、自分の常に持っているお札の枚数を教えてくる。

「もう一回来る」

三枚。魔法陣のストックは基本的に効かないので今投げられるものは無い。なので横に避ける。

地面に張り付いた三枚のお札は、電撃を僅かに発して消える。

「まだっ!」

一枚、お札が更に飛んできた。残りの一枚かもしれない。

ギリギリ完成した魔法陣を禰子は投げる。これも燃えて消えた。

「佳織の事は助けたから、」

「今は逃げた方がいいかもしれない」

私と禰子は相談し、後ろに下がろうとする。

その時、後ろにいた佳織が、

「メリア!あんた!」

とメリアに向かって怒鳴るように声を上げた。が、

「うるさい!誰の、誰のせいでこうなったと思ってるのよ!」

とメリアが怒鳴った。

「あんたの、せいで、こうなったのよ!!」

私は危険を感じて転移を禰子に伝える。

突然、目前に大量の槍が現れ、私達に向かって飛んでくる。

私は禰子に、咄嗟に転移を使わせた。


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逃げられた。

なんで、いつも上手くいかないの?

私は、ただ、ただ佳織の事が好きなだけなのに。

何度でも拐う。何度でも、何度でも。

一緒にいたいから……。

執着してあげる。